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はじめに

「まだ誰にも言ってないけどこんなことがしてみたい」
「そういうことは不安になるからしたくない」
「この決まりって守らなきゃいけないのか分からない」
私たちは自分に関係ある物事について様々なことを思い、考えています。
ですが、もし、そんな思いや考えを、あなたがまだ若く未熟であることを理由に、無視されたり、否定されたりしたらどうでしょう?
仕方がない? それはおかしい?
たしかに、子どもは大人と比べると、まだ知らないことや未発達な点も多くあります。
しかし、たとえ言葉すら知らない赤ちゃんであっても、その思いを尊重されるべき大切な主権者の1人です。
子どもには社会のあり方や自分の人生について意見を聞かれ尊重される権利があり、これを「意見表明権」と言います。意見表明権は、積極的に守ろうとしなければ簡単に損なわれてしまう権利です。
子どもたちが、きちんと思いを表現でき、大人がそれに応えられる環境を作るためには、何が必要なのでしょうか?
子どもの権利条約における「意見表明権」
この権利は子どもの権利条約第12条で定められています。
条約の4つの基本的な権利のひとつ「参加する権利」に含まれており、さまざまな権利の基盤となる大切な権利です。
さっそく条文を見てみましょう。
- 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
- このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。[1]
第1項では主に、子どもが自由に意見を述べる権利の約束と、それに対する大人側の受け止め方について、
第2項では、そのための、子どもの意見が聞き入れられる場の確保について述べています。
では、条文内のフレーズをあげながら、詳しくご紹介します。
第1項① 自己の意見を形成する能力のある児童
一見、特別な能力がある子だけにこの権利があるように聞こえますが、そういうわけではありません。
すべての子どもに意見を形成する能力が備わっている、ということを説明しているものです。[2]
この「すべての子ども」には、様々な理由で言葉によるコミュニケーションができない子どもなども、もちろん含まれます。言葉を使わなくても、泣いたり、笑ったり、手足を動かしたりして「意見」を表すことができますよね。
第1項② その児童に影響を及ぼすすべての事項
子どもには自分が重要だと思うことを含め、自分に関係があるすべての事柄について意見を表明できる権利があります。
「影響を及ぼす事項」については広く解釈されるべきであり、具体的な定義はありません。
最近の例としては、新型コロナウイルス感染症に関する意見があります。

第1項③ 自由に
「自由に」は意見表明権を実践する際に欠かせない要素で、権利の実現のために求められる配慮のことを指しますす。
大人は子どもが自由に意見を述べられるように配慮しなければいけません 。
その際のポイントは以下の通りです。
- わかりやすい説明
- 意見表明は任意であること
- 安全に意見を表明できること
- 子どもに合った環境であること
先ほどの子どもの意見を集めたアンケートでは、実際にこのような文章を使って、子どもに回答を求めています。

わかりやすい説明
大人は子どもに対して、子どもが十分な情報に基づいて意見を述べたり何かを決定したりできるように、その子にわかりやすく、適切な形で教える必要があります。[5]
偏った情報を与えて特定の意見に誘導させたり、そもそも選択肢があることすら知らせないようなことがあってはいけません。
意見表明は任意であること
子どもには意見する権利と同時に意見するか選ぶ権利もあります。
子どもには、いつでも関与をやめてよいことが知らされ、その子が自分の考えや情報などを秘密にしたい時、
大人は無理強いしない、子どもが発言できるようになるまで支援したり十分時間をとる、などの対応を取らなくてはいけません。[2][5]
安全に意見を表明できること
特に、非常に幼い子どもが関係する場合、または子どもが犯罪・性的虐待・暴力などの被害者である場合には、安全に意見表明が行われていない、とされています。[2]
子どもがある意見や選択肢を選ぶように大人が圧力をかけたりすることで、子どもへの暴力や搾取などの危険が及んだりしやすいためです。
大人はいつでもこういった事態を回避するように努め、危害に遭った時の相談先や対処法といった情報を、子どもと共有し、その子の安全を確保した上で、安心して意見を表明できるようにしなければいけません。[2]
子どもに合った環境であること
子どもが意見を述べる場や意見を表明する方法は子どもの年齢や発達に相応のものでなければいけません。
また、必要に応じて、子どもが必要な情報を十分に理解して考え、判断できるように大人がサポートすることが求められます。
第1項④ 年齢及び成熟度に従って考慮される
権利の実践が難しいとき
年齢や成熟度によっては意見を求めることが難しいこともあります。
なお、年齢は発達段階の目安に過ぎないため、年齢による画一的な線引きはできるだけ避けるべきです。
また、同委員会は成熟度について次のように述べています。
成熟度とは、……第12条の文脈では、これは諸問題に関する自己の意見を合理的にかつ独立に表明する子どもの力を意味する。その事柄が子どもに及ぼす影響も考慮されなければならない。結果が子どもの人生に及ぼす影響が大きいほど、その子どもの成熟度を適切に評価することは重要性を増す。[2]
「合理的にかつ独立に表明」された意見とは「誰かの考えや行為にも左右されるものでなく状況を十分理解した上で自分で出した答え」と言い換えることもできるでしょう。
子どもは、たとえ大人と同等ではないとしても、社会のあり方や自分の生活について考え、判断する力を持っていますが、
大人は年齢や成熟度を加味して、子どもに自分の意見を形成する能力があると認められるときにその意見を考慮しなければいけません。
参考として、先程のアンケートで集まっている意見と子どもの年齢を引用します。
ともだちや家族について 【よくなかったこと】[6]
◇高校生になってみんなの価値観が変わって行く中ですれ違いが多くなった。しかし、コロナの影響で話す機会が減り、いままでならすぐに解決できることも難しくなったと思う。(高校2年生/女児/愛知県)
◇夕方におともだちとあそぶじかんがないから、つまらないし、おともだちと話がぜんぜんできない。 せきがでちゃっただけでも、コロナ!キャー!ヤダ!!って言われていやな気持ちになった。 お母さんのお仕事がコロナの場所だから、お友達がお友達のお母さんに、近くに行っちゃダメだよ!って言われたって言ってたから話してもらえなくなって悲しかった。(小学2年生/女児/千葉県)◇親がコロナやそれに関する政治に対して、不満を言っているのを聞くのが嫌だった。(中学1年生/女児/埼玉県)
◇学校でしゃべるとクラスの子が注意してきてめちゃくちゃうざい(小学3年生/男児/東京都)
◇父や祖父母と会えなくなってあまり話さなくなって悲しい(小学5年生/男児/神奈川県)
◇わたしはますくできないのにますくしろといじみめられるし おかあさんもぜんそくでますくできないのにせんせいからしろとおこられてたりみたくない(小学1年生/女児/東京都)
第2項① 聴取される機会を与えられる
ただ意見を表明する”だけ”では不十分で、大人は、子どもに関係あることを話し合い、決定する場には、その子が自発的に意見を表明できる場を設け、積極的に意見を聞こうとするべきだということです。
第2項では特に、裁判や行政的な手続きにおいて必要だと記されています。
行政的な手続きには、例えば停退学の異議申し立てや、両親の別居にかかわる手続きなどがあります。
その際、子どもは自ら意見を述べるか、代理人に代弁してもらうか選ぶことができます。
さらに、大人がその意見を聞こうとし、尊重することで初めて、意見表明権は成立します。
また大人には、意見がどのように解釈され、それによって結果がどのように変わったのかを子どもに説明する(フィードバックする)責任があります。
フィードバックには期限を設けることが望ましく、子どもにはその結果を評価する権利があります。結果に不服であれば異議を申し立てられる権利があります。
意見表明権は子どもが大人と対話する権利だと言うこともできますね。
参考として、先程のアンケートでは、このようなフィードバックがされています。

ここまでのふりかえり
ここまでを踏まえて条文をわかりやすく言い換えると、

子どもにはだれでも自分の意見を形成する能力があるので、
子どもが自分に関係のあるあらゆる事柄について、
本当に思っていることや考えていることを表明する権利を約束しないといけません。
その時は子どもの年齢や発達に応じて、その意見を正当に重視する必要があります。
このため、子どもが自分に関係のある事柄、特に裁判や行政的な手続きにおいて、
自分で、または代理人を通して届けた声に耳を傾けなくてはいけません。
というようになるでしょう。
具体的な取り組み
日本では、2016年の児童福祉法の改正で、子どもが権利の主体として初めて位置づけられ、
子どもの意見が尊重されることなどが書き込まれました。[7]
日本で行われている子どもの「意見表明権」のための具体的な取り組みをいくつかご紹介します。
川西市「子どもの人権オンブズパーソン」
子どものための独立した権利擁護機関は日本でも徐々に増えており、現在30以上の自治体で設置されています。
その先駆けのひとつとなったのが、川西市の「子どもの人権オンブズパーソン[8]」です。
川西市では子どもの権利条約の理念に基づいて「オンブズパーソン条約」を1998年に制定し、
子どもの人権に関する様々な法令を参照しながら子どもの人権救済を進める公的第三者機関として
「オンブズパーソン」を1999年に設置、運営しています。
「子どもの人権オンブズパーソン」は、いじめ・差別・体罰・虐待などで苦しんでいる子どもたちを助けるために、
市の条例でつくられた公的第三者機関です。
ふだん子どもたちの身近にいる家族や学校の先生とはちがった立場で、
子どもの話をしっかり聞いて、子どもにとって一番よい解決方法を、子どもと一緒に考え、手助けします。
子どもアドボカシー
「子どもアドボカシー[9]」は、児童虐待防止や児童福祉制度改革のキーワードとして近年取り入れられるようになった概念です。
特に独立(専門)アドボカシーは、児童相談所の措置等を受ける子どもを対象に、
意見表明権の存在など必要な情報を伝え、これまで拾いきれなかった子どもの声を聞き、
必要に応じて子どもが伝えたい場に届かせようとする新しい取り組みです。
サポートは子ども意見表明支援員、またはアドボケイトと呼ばれる、訓練を受けた第三者の市民が行います。
もっと知りたい人へ
簡単に知りたい方はこちら
「子どもアドボカシーを考える」朝日新聞デジタル(最終閲覧日:2021/7/18)
具体的なケースと一緒に、アドボカシーを考えることができます!
詳しく知りたい方はこちら
「アドボカシーに関するガイドライン案」三菱UFJリサーチ&コンサルティング(最終閲覧日:2021/7/18)
編集後記
ここまで読んでいただきありがとうございます!
Rettborneメンバー、記事制作担当のちーちゃんです。
初めてのご挨拶なので少しだけ自己紹介をしたいと思います!
私は大学生で、何か新しいことを始めたいなあと思っていたときに、Rettborneに入らないかとお声がけいただき、活動に加わることになりました。
記事の内容は、普段学んでいる分野外であることもあるので、資料を漁り、他のメンバーと相談しながら文章を推敲しています。私自身も、勉強になることが多いなあと感じています!
子ども時代は心も体も1番成長し、その後の人生に大きな影響を与える大切な時期です。ですが同時に、生まれてきたこの世界についてゼロから学んでいく時期でもあります。あの時このことを知っていたらなあ、と大人になって思うことは私もたくさんあります。Rettborneが、そんな必要な情報が必要とする人たちにリーチできるメディアであるように、これからも頑張ります!
参考文献
[1] 児童の権利に関する条約 外務省(最終閲覧日:2021/7/18)[2] 一般的意見第12号 子どもの権利委員会(平野裕二訳)(最終閲覧日:2021/7/18)
[3] コロナ×こどもアンケートその5 国立成育医療研究センター(最終閲覧日:2021/7/18)
[4] 国立成育医療研究センター コロナ×こども本部 アンケートに協力する(最終閲覧日:2021/7/18)
[5] Children and Young People’s Participation in Wales … Good Practice 2016 Wales政府(最終閲覧日:2021/7/18)
[6] コロナ×こどもアンケート第5回調査 報告書(最終閲覧日:2021/7/18)
[7] 子どもアドボカシーを考える 朝日新聞(最終閲覧日:2021/7/18)
[8] 子どもの人権オンブズパーソン 川西市(最終閲覧日:2021/7/18)
[9] アドボカシーに関するガイドライン案 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(最終閲覧日:2021/7/18)
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