【障害の社会モデル】合理的配慮とは

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はじめに

近年、鉄道駅などで「ホームドア」を見かける機会が増えてきました。

画像1

↑こういうやつです

ホームドアの設置は、ホームからの転落や列車との接触事故防止などを目的とした安全対策の一つです。[1]

これは、目の見えにくい・見えない方への、「合理的配慮」の一つということができます。

この文章を読んでいる人の中にも、コンタクトやメガネを使っている人は多いのではないでしょうか。
視力の低下が見られる人がメガネをかける、これも「合理的配慮」の一つです。

直接言葉を聞くことは少なくても、実は身近に溢れている「合理的配慮」。

言葉の意味、そして背景を知り、子どもの身の回りにある合理的配慮を知ることが、今回の目的です!


「合理的配慮」の背景

まずは言葉の定義をみてみます。
障害者の権利に関する条約にて、このように説明されています。

障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの [2]

…少し難しいですね。

厚生労働省が提供しているリーフレットには、このような説明があります。

障害のある人は、社会の中にあるバリアによって生活しづらい場合があります。この法律では、役所や事業者に対して、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者においては、対応に努めること)を求めています。[3]


合理的配慮を提供しないことは、「不当な差別的取扱い」とみなされます。

不当な差別的取扱いについて、同じく厚生労働省が提供しているリーフレットでは、このように説明されています。

障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービスの提供を拒否することや、サービスの提供にあたって場所や時間帯などを制限すること、障害のない人にはつけない条件をつけることなどが禁止されます。
正当な理由があると判断した場合は、障害のある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが大切です。[3]


また、こんなことも書かれています。

この法律に書いてある「障害者」とは、障害者手帳をもっている人のことだけではありません。

身体障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人(発達障害のある人も含む。)、その他の心や体のはたらきに障害がある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてが対象です。(障害児も含まれます。)[4]


「日常生活や社会に相当な制限を受けている人」とはどういうことでしょうか?


「障害」とは何だろう?ー「社会モデル」と「医学モデル」

ここで知っていただきたいのが、障害の「社会モデル」という考え方です。


社会モデルとは

障害者が困難に直面するのは、社会の作りや仕組みに原因があるという考え方です。世の中にはいろんな人がいて、車椅子の人だってたくさんいます。だから、スロープやエレベータをつけてみんなが困らない社会にしていこうということです。[5]

医学モデル(個人モデル)とは

障害者が困難に直面するのは、個人の心身機能が原因であるという考え方です。これは障害の原因は「あなた」にあるので、自分で努力や工夫をして障害を克服してくださいという考え方です。具体的には、街中に数多くある段差や階段などは、自分の力でなんとか乗り越えられるようにしてくださいということになります。[6]

2つの違いをイラストにしたのが、こちらです。

スクリーンショット 2021-08-08 17.45.09
(画像:心のバリアフリー愛顔の接遇マニュアル 愛知県 [6]

 

一般的な「〜障害」という名前がついていなくても(呼ばれていなくても)、社会の仕組みや制度によって、生きづらさや困り感を感じる人(=障害を抱える人はたくさんいます。
そういった人にも合理的な配慮を提供しよう、と考えるのが、この「合理的配慮」の本質だといえます。

最近では、「制服を自由に選べるようにする」などが、合理的配慮の例の一つとして注目されていますね。


子どもに関する合理的配慮

では、子どもにとって身近な合理的配慮には、どのようなものが挙げられるでしょうか。
千葉県のホームページではたくさんの事例が紹介されていますが、そのうちの1つ(事例21)を取り上げます。[7]

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整理整頓が苦手なDさん

整理整頓が苦手なDさんは、机の中やかばんにぐちゃぐちゃのプリントがいっぱい入っています。机の中やロッカーは次々と物を入れてしまうので、必要なものがすぐに取り出せず、行動が遅れてしまうこともあります。テスト前に授業で使ったプリントがなくていつも慌てています。

どうしてそうなるの?(考えられること)
片付け方や整理の仕方をうまくイメージできないため
しまった場所や使ったことを覚えていないため
必要なものを探しているうちにさらに散らかってしまうため
片付ける習慣が身についていないため他のことや次のことに気をとられ、
片付けに意識が向かないため

提供できる配慮① 整理がしやすい環境をつくる

  • 教科別にノートやファイルの色を変え、まとめて整理しやすくする。
  • 教科ごとに教科書。ノート・プリントなど必要な物をクリアケース等でまとめておき、かばんから該当の授業のクリアケースのみを出し、授業が終わったらすぐにかばんに戻す。

提供できる配慮② 学級全体で取り組む

  • クラスのルールとして、生徒が使用する棚やロッカーの整理の仕方をプリントにして配布、掲示するなど自分で確認できるようにする。
  • 授業の始めには使う物を確認し、必要のないものは片付ける時間を設ける。また、授業の終わりにはその授業で配布したプリント類の整理をする時間を設けるなど、クラス全員で整理整頓を意識できるようにする。

提供できる配慮③ 整理整頓の意識化を図る

  • きれいになっていることをほめるようにする。片付いていることが便利であることを実感できるようにする。
  • 片付ける方法が分かるように具体的な言葉で、片付けを促すようにする。

ポイント
「きちんと片付けなさい」ではなく、
「ノートは机の中にしまいます。」というように、
具体的な指示を出します。

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他の機関・企業からも様々な事例が取り扱われていますが、株式会社LITALICOが提供している、『学校での「合理的配慮」ハンドブック』には、相談ガイドや相談シート、よくある質問もまとめられているので、ぜひご覧ください。

スクリーンショット 2021-08-08 17.56.10
(学校での「合理的配慮」ハンドブック 株式会社LITALICO[8]


合理的配慮のイメージ:「ずるい」「わがまま」「甘え」?


教育現場での合理的配慮として、「書くことが苦手だからタブレットで板書を写真に撮る」という例があります。

これは主に学習障害(ディスレクシア)の子どもへの合理的配慮になります。

この配慮に対して、みなさんはどのように思うでしょうか。

中には、「〇〇だけ特別扱いするのはずるい」「他の子に対して不公平になる」「自分だって写真を撮った方が楽だ」と思う方もいるのではないでしょうか。

実際に教育の現場でも、合理的配慮に対して「不公平感」を感じる、という理由で、タブレットの使用を認めていない例もあります。

では、本当に「不公平」だと言えるのでしょうか?

こちらの写真を見てください。

合理的配慮がない状態(平等)、というのは、左の状態を指します。
合理的配慮がある状態(公平)は、右の状態です。

画像4
(画像: Instruction Institute for Social Change [9]


 

合理的配慮は、同じ土俵でチャレンジするためのサポートの形であり、
えこひいきをしたりルールを変えることを目的にしたものではありません。

「不公平だ」と感じる人や状況がある場合には、配慮を受ければみんなと同じように学べることを説明したり、他の子どもが困っている時には逆に支えてあげるなど、違いを尊重しながらお互いに出来ることを話しあえるといいですね。[8]

このイメージを社会で共有して、より暮らしやすい社会を実現できるといいな、と思います。

もっと知りたい方へ

他のページでもわかりやすく説明されています。知識を深めるためにもぜひご覧ください!

合理的配慮とは?考え方と具体例、障害者・事業者の権利・義務関係、合意形成プロセスについて LITALICO発達ナビ(最終閲覧日:2021/8/8)

また、たくさんの事例をみて、日常生活に役立ててみてください!

障害のある人への合理的配慮ハンドブック(施設利用、情報提供、意思表示の受領編) 福岡県(最終閲覧日:2021/8/8)

医療機関における障害者への合理的配慮事例集 厚生労働省(最終閲覧日:2021/8/8)

合理的配慮の事例 板橋区(最終閲覧日:2021/8/8)

参考文献

[1] どこでも柵 東京大学生産技術研究所(最終閲覧日:2021/8/8)
[2] 障害者の権利に関する条約 外務省(最終閲覧日:2021/8/8)
[3] 「合理的配慮」を知っていますか? 内閣府(最終閲覧日:2021/8/8)
[4] 障害者差別解消法がスタートします! 内閣府(最終閲覧日:2021/8/8)
[5] 「障害」とは何か?個人モデルと社会モデル メディケア・リハビリ(最終閲覧日:2021/8/8)
[6] 心のバリアフリー愛顔の接遇マニュアル 愛媛県(最終閲覧日:2021/8/8)
[7] 合理的配慮事例集〜小中学校の通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒の事例を中心に〜 千葉県(最終閲覧日:2021/8/8)
[8] 学校での「合理的配慮」ハンドブック 株式会社LITALICO(最終閲覧日:2021/8/8)
[9] Instruction Institute for Social Change(最終閲覧日:2021/8/8)

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