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はじめに
このページを読んでいる人の中に、「人生で一度も遊んだことがない」という人はいないでしょう。
大人になると、「遊ぶ」という機会は減り、親近感は段々と薄れてくるかもしれません。
また、「子どもの頃、遊び呆けずにもっと勉強しておけばよかった」「遊んだところで生活ができるようになるわけじゃない、仕事をしないと…」など、遊びに対してむしろマイナスのイメージをもつ方もいるかもしれません。
ご自身の反省を踏まえて、子どもにはしっかり勉強に取り組ませているという方もいるでしょう。
勉強をすること、仕事をすることなど、これらは非常に重要ですが、
子どもにとって「遊び」は、勉強や仕事と同じように大切な存在です。
2019年には、板橋区に住むの子どもたちが、「公園の利用終了時間を午後4時半から5時半までに延長してください」という主旨の陳情書を区に提出したことが話題になりました (1)。
紆余曲折を経たものの、最終的には子どもたちの声が受け入れられ、おとなと子どもで話し合いを重ね、子どもの権利保障を実現できた例としても知られています。
さて、どのような「遊び」が、どのように大切で、おとながしなければならないことは何なのでしょうか。詳しくご紹介します。
遊ぶだけじゃない
「遊ぶ権利」は、子どもの権利条約31条で定められています。
第31条 (2)
【第1項】
全ての子どもには、休む権利、レジャーの権利、遊ぶ権利があり、年齢に応じてレクリエーションを楽しみ、文化的、芸術的活動に自由に参加する権利がある。
【第2項】
締約国は、子どものこれらの権利を尊重し、どの子どもも文化的、芸術的活動やレクリエーション活動、レジャー活動に参加できるように環境を整えなければならない
これらをまとめて、
休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利
とされています。
条項に書かれている通り、遊ぶ権利以外にも、休む権利、レジャーの権利があり、また文化芸術的活動に参加する権利があります。
そして、おとなはこれらの環境を整えなければなりません。
第31条を詳しく解体
子どもの権利委員会・一般的意見17号(3) では、以下のように説明されています 。(資料をもとに再編しています。)
★休息・余暇:基礎的な栄養、住居、保健ケアおよび教育と同じぐらい子どもたちの発達にとって重要
休息(rest)
・仕事、教育またはなんらかの努力から一時的に解放される十分な時間
・十分な睡眠を取る機会
→遊びや創造的やりとりに参加するために必要なエネルギーおよびやる気を持てる
余暇(leisure)
・遊びまたはレクリエーションが行われうる時間
・自由時間、または何らの義務も負わない時間
=子どもの思い通りに使用される、主として自由裁量の時間である
★遊び(play)
子どもたち自身が主導し、統制しかつ組み立てる振る舞い、活動またはプロセス
・非義務的なもの
・内発的動機に基づくもの
・目的のための手段としてではなくそれ自体を目的として行われるもの
自ら主導する遊びを通じて能力を行使する機会は、
やる気、身体活動性およびスキルの発達に繋がり、
文化的生活に没頭することで、楽しみに満ちた交流が豊かになるとされています。
この他にも多くの重要な要素があります!
最もよい環境をつくるには?
では、子どもたちにとって最もよい環境、遊びに関する子どもの最善の利益を実現するには、どうすればよいのでしょうか?
一般的意見17号(3) で取り上げられている要素を一部ご紹介します。
・子どもたちが地元の地域で自由かつ安全に動き回れるよう、廃棄物、汚染、交通その他の物理的危険が十分に取り除かれた環境
子どもたちが簡単にいくことができる場所、住んでいるところから近い場所、という点も明示されています。

確かに、遊び場まで行くのに車で2時間!なんてことがあったらいけないよね…
・子どもの年齢および発達にふさわしい休息が得られること
特に夏場、子どもは暑さを忘れて遊びに熱中してしまいます。子どもの様子を見ながら、こまめに休憩の声かけをすることも大事です。
・多様かつ挑戦的な物理的環境のもと、おとなに付き添われることなく屋外で遊ぶための空間および機会(ただし、必要なときは支援的なおとなに容易にアクセスできること)

大人からすると「危ないことしないで…!!」という気持ちから、止めてしまいたくなるかも…
うまくバランスを取りたいね。
・自然環境および動物界を経験し、これと触れ合い、かつそこで遊ぶ機会
特に都会で暮らしている子どもにとっては、自然や生き物が、思っている以上に疎遠な存在になっていることもありえます。新型コロナウイルスが猛威を奮っている今、海や山などへの遠出がしにくくなっていますね…
・自らの想像力および言葉を使いながら自分たちの世界を創り出しかつ創り変えていけるよう、自分たち自身の空間および時間に没入する機会
例えば秘密基地などが、これにあたるかもしれません。
・必要に応じて十分な訓練を受けたファシリテーターまたはコーチによる支援を受けながら、遊戯、スポーツその他のレクリエーション的活動に他の子どもたちと共に参加する機会

地域で開かれるスポーツ教室などもこれにあたるといえるね!
他には、
・ストレスを受けないこと
・社会的排除、偏見または差別を受けないこと
・社会的気概または暴力の心配がない環境
・他の要求が課されない余暇時間が得られること
・おとなによる統制・管理から自由な、遊びのためのアクセス可能な空間および時間
・自分たち自身のコミュニティの文化的および芸術的遺産を探求・理解し、これに参加し、かつこれを創造、形成する機会。
・第31条に定められた権利が有する価値および正当性の、親、教員および社会全体による承認
があげられています。
遊びに関する条例
一部の自治体では、子どもの遊びに関する条例が定めれています。
代表として、
東京都千代田区
子どもの遊び場に関する基本条例 (4)
神奈川県大和市
大和市子どもの外遊びに関する基本条例 (5)
があげられます。この条例はどちらも、外遊びの重要性を伝えており、子どもが外でのびのびと遊ぶことができる環境をつくることを促しています。
実例からみる対処すべき課題
残念ながら、日本では遊ぶ権利がきちんと保障されているかというと、Yesと答えることはできない状態にあると考えられます。
その背景には、このような構造があるといわれています(3)。
権利の意義が十分に認識されていない
↓
適切な条件整備のための投資が行われない
↓
保護のための法制が薄弱もしくは存在しない
↓
国・地方のレベルにおける計画策定にあたって子どもたちが不可視化される
他にもたくさんの課題が指摘されています (3) 。
・遊びおよびレクリエーションの重要性に関する意識の欠如
・成績に関する圧力
「勉強の方が大事だ」という思いが先行し、遊びへの意識が低くなることがあるかもしれません。
・安全性を欠く危険な環境
・リスクと安全のバランス
毎年、ニュースなどで、危険だと思われる環境で起きた悲しい事故が報道されます。
適度に挑戦的な環境を整えることが必要だと考えられます。
・子どもたちが公共空間を利用することへの抵抗
「はじめに」でも紹介したように、公園などの施設において、「ボール遊び禁止」「大声禁止」などのルールが作られていることもあります。
もちろん、どんなボール遊びも自由にやっていい・いつでも騒がしくしていい、ということはありませんが、大人と子どもで意見を出し合って、適切なルールづくりをしていくことが、本来は必要なのかもしれません。
・電子メディアの役割の増大
さまざまなデジタルプラットフォームおよびデジタルメディアは、教育的、社会的および文化的に大きな利益を提供するものであり、
これらの利益を経験する平等な機会をすべての子どもに対して確保することが求められています。
その一方で、
・ネットいじめ、ポルノグラフィーおよびネット上の誘いかけ
・暴力的なビデオゲームへの参加の度合いの高まり
(ゲームは没入および双方向性の度合いが高く、また暴力的振る舞いに対して報酬を与えるもの)
・テレビは、社会全体に存在する多様な文化の言語、文化的価値および創造性を反映していない
・ゲーム/コンピューター画面関連の活動への依存の高まり
などが指摘されています。
他には、以下のような課題があります。
・自然に対するアクセスの欠如
・開発プログラムにおける第 31 条の軽視
・過剰に構造化、プログラム化されたスケジュール
・子供達のための文化的・芸術的機械への投資の欠如
・遊びの販売促進・商業化

遊ぶ権利を保証するために必要なこと、遊ぶ権利を侵害しないように注意しなければならないこと、双方に目を向けて、より良い生活環境を実現させたいですね!
もっと知りたい人へ
遊ぶ権利と関連が深い団体はこちら!
・特定非営利活動法人子どもと文化のNPO Art.31
書籍などもたくさん出版されています!
・NPO佐倉子どもステーション
たくさんのレクリエーションが企画されています!
2021年9月21日追記
『にいがたしにあたらしいスケートパークをつくってください』
こちらの署名運動では、遊ぶ権利や意見する権利などを求めていることがわかります!レットボーネも署名に参加させていただきました。