【体罰によらない子育て①】何が「体罰」になるの?しつけのためには必要?

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はじめに


児童福祉法、児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律)にて、2020年4月より、

いわゆる「体罰の禁止」の内容を盛り込んだ法改正が施行されました。


この法改正は体罰をした人を罰することではなく、体罰によらない子育てを社会全体で推進することを目的としたものです。

実際に子どもと接していると、どうしても厳しく叱らないとおさまらない場面や、子どもを叩かずにしつけをするにはどうしたらいいんだろう、と途方に暮れる場面もあるかもしれません。

ただ単に「体罰を禁止」されるだけでは、わからないところや腑に落ちないところもあるのではないでしょうか。

レットボーネでは、これから何回かに分けてこの体罰というトピックに向き合います。

たった一度取り上げるだけでは、この問題を理解することは難しい、と考えているからです。

何が体罰とされるのか、どうして体罰が禁止されるのか、体罰を使わずに子どもと関わっていくために気をつけることは何か、私たちと一緒に学んでいきましょう。


子どもの権利条約でみる「体罰」

まず、子どもの権利条約とはどのようなものだったかを、おさらいしましょう。

レットボーネは以下のように紹介しています!

この場合の「子ども」とは,18歳未満の全ての人を指します(1)。そして,「権利」とは,社会全体が守るべきルールに則って求めることができる,ある行為を行う正当な根拠や資格のことです(2)。体の小ささや経験の少なさから,無力な存在として扱われがちな「子ども」ですが,大人と同様,一人の人間として,様々な行動を起こす権利が与えられているのです。

https://rettborne.com/index.php/2021/11/05/childrensrights/

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https://rettborne.com/index.php/2021/11/05/childrensrights/


国連子どもの権利委員会は、体罰についてこのようにまとめています。

体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利 (1) 

この権利は、主に19条・28条2項・37条をまとめたものです。それぞれの内容はこちらです。

第19条:暴力などからの保護
親(保護者)が子どもを育てている間、どんなかたちであれ、子どもが暴力をふるわれたり、不当な扱いなどを受けたりすることがないように、国は子どもを守らなければなりません (2) 。

第28条2項:教育を受ける権利
締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる (3) 。

第37条:拷問・死刑の禁止
どんな子どもに対しても、拷問や人間的でないなどの扱いをしてはなりません。また、子どもを死刑にしたり、死ぬまで刑務所に入れたりすることは許されません。もし、罪を犯してたいほされても、尊厳が守られ年れいにあった扱いを受ける権利をもっています (4) 。


家庭や学校での体罰はもちろん、子どもが罪を犯した場合についても触れられていることがわかります。

日本の法律でみる「体罰」


ここまでは、国際的な条約の中での体罰をみてきました。

次は、日本の法律ではどのように定められているかをみていきます。

2020年4月、(通称)児童虐待防止法で、「体罰の禁止」を盛り込んだ改正法が施工されました。


マスメディアでも頻繁に取り上げられていたテーマで、記憶に新しい人もいるのではないでしょうか。

厚生労働省からも、このようなポスターが出されています。

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(5) 厚生労働省


セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、法改正の内容をまとめて解説しています。

●児童虐待の防止等に関する法律(太字部分が今回の改正箇所)
14条1項
児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。

つまり…、

・体罰をすること。
親はしつけのために体罰をしてはいけない、と明記されました。

・民法の820条に書いてある監護と教育に必要な範囲を超えるような行為。
※民法820条は、親権者が子どもの利益のために監護及び教育を行う権利を、また民法822条ではその監護と教育に必要な範囲の中で子を懲戒すること(懲戒権)を認めています。
今回の改正では、子どもの監護と教育に必要な範囲を超えるような行為(懲戒権が認められる範囲を超えた行為)もしてはいけない、となりました。

●児童福祉法(太字部分が今回の改正箇所)
第33条の2の②
児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を取ることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

第47条③
児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親は、入所中又は受託中の児童等で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育、及び懲戒に関し、その児童等の福祉のための必要な措置をとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。


※児童福祉施設(保育所、子ども家庭センター、児童養護施設 など)の長やファミリーホームの養育者、里親が対象です。

対象の子どもに、社会で必要なサポートやケアについて、その子自身の福祉のため、必要な対応ができる、けれども、体罰をしてはいけない、となっています 。
なお 、そもそも今回の法改正で、体罰が禁止された親以外の者による体罰は当然に許されない行為であるとされています。

(6) セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン


何が「体罰」にあたるのか

では、何が「体罰」にあたっていて、禁止されているのでしょうか。例として、『日本行動分析学会「体罰」に反対する声明』をご紹介します。

ちなみに、「行動分析学」とは、「人間を含めた動物全般を対象として、行動の原理が実際にどう働くかを研究する学問 (7) 」です。簡単にいうと、「行動の原因は何なのか、制御するにはどうすればよいのか」を研究するものです。

「体罰」は、教育や指導、訓練などの文脈で、教師や親、指導者やトレーナーなどの教え手が、児童生徒や患者、利用者などの学び手に、身体的、精神的な苦痛を与える行為です。
「体罰」には、殴る、叩く、つねる、蹴る、首を絞めるなど、身体に直接苦痛を与える行為、長時間正座させたり、おさえつけたり、狭い部屋に閉じ込めたり、拘束するなどの、間接的に苦痛を与える行為だけでなく、大きな声や音をだして脅したり、汚いことばでののしったり、脅したりして、精神的な苦痛を与える行為も含みます。

(8) 日本行動分析学会

さらに具体的に、「体罰」にあたる行為が厚生労働省から示されています。

・ 言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
・ 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・ 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・ 他人のものを取ったので、お尻を叩いた
・ 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
・ 掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた

・ 冗談のつもりで、「お前なんか生まれてこなければよかった」など、
子どもの存在を否定するようなことを言った
・ やる気を出させるという口実で、きょうだいを引き合いにしてけなした

これらは全て、体罰です。(9) 厚生労働省

「体罰」という言葉の中には、身体的な苦痛が伴っていなくても、精神的な苦痛があるものも含まれていることを、忘れないようにしなければいけませんね。

次回予告

次回は、「体罰はなぜだめなのか」について、ご紹介します。

もっと知りたい方へ

体罰というテーマでは、たくさんの機関から情報が発信されています。イラストなどを交えてわかりやすく解説されているページも多いので、ぜひご覧ください。

簡単に知りたい方へ


詳しく知りたい方へ


質問コーナー「体罰賛成の意見を聞くべき?」

「体罰に賛成する子どもや若者の意見を耳にします。彼らの意見を聞くべきでは?」


「身体的な罰を受けることが、自分自身にとって良いことだ」と発言する子どもや若者がいるのは事実です。体罰は、しつけのためだから、親の愛があるのだからといった理由で、そう言うのです。

もちろん、私たちは子どもや若者の意見に耳を傾けなければなりません。しかしながら、私たち大人は子どもの言っていることをうのみにするのではなく、子どもが話したことを理解する責任があります

子どもが体罰は良いもので必要だと語るとき、体罰を受けることが当たり前で正しいとする環境で育てられていることがあります。体罰は自分のためであると自身に言い聞かせることで、親や養育者の態度や行動を受け入れ、受けた痛みを正当化し、また納得しようとした結果とも言えるのです。

子どもには、あらゆる暴力から保護される権利があります。これは、人間としての尊厳と身体的不可侵性*が尊重されるということです。これらの権利を法律で保障することは政府の責任です。そして、親や養育者、周囲の大人たちは、子どもが自身の持つ権利について知り、自分や他人との関係のなかで権利を尊重することを学ぶように育てる責任を負っています。

* 身体的不可侵性(physical integrity)とは、自分自身の身体をコントロールできること。すべての人はこの権利を有しており、自らの身体があらゆる形態の暴力から守られているという安全感がなければならないことを意味する

(10) セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

引用文献

[1] 子どもの権利委員会 一般的意見8号 (2006年) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利(とくに第19条、第28条2項および第37条)(最終閲覧日:2021年8月1日)

[2] ユニセフ 子どもの権利条約 日本ユニセフ協会抄訳17―24条(最終閲覧日:2021年8月1日)

[3] ユニセフ 子どもの権利条約 政府訳(最終閲覧日:2021年8月1日)

[4] ユニセフ 子どもの権利条約 日本ユニセフ協会抄訳33 ―40条(最終閲覧日:2021年8月1日)

[5] 厚生労働省 体罰等によらない子育てを広げよう!(最終閲覧日:2021年8月1日)

[6] セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 体罰禁止のポイント(最終閲覧日:2021年8月1日)

[7] 杉山 尚子・島宗 理・佐藤方哉 (1998). 行動分析学入門 産業図書


[8] 島宗 理・吉野 俊彦・大久保 賢一・奥田 健次・杉山 尚子・中島 定彦・長谷川 芳典・平澤 紀子・眞邉 一近・山本 央子 (2015). 日本行動分析学会「体罰」に反対する声明 行動分析学研究, 29, 96-107.


[9] 厚生労働省 体罰等によらない子育てのために~ みんなで育児を支える社会に ~
令和2年2月 厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」
(最終閲覧日:2021年8月1日)

[10] セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 子どもに対するあらゆる体罰を禁止するために よくある質問集(最終閲覧日:2021年8月1日)

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