差別の禁止〜子どもの権利条約 一般原則〜

レットボーネではイラストでの解説記事も同時に公開しています!

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はじめに

「差別」の問題は、とても大きく、大人にも深く関連があります。
実際に、差別の禁止は、人権条約すべてに規定されている原則です。(1)

ですが、子どもの周りには、子どもならではの差別やそれに関する課題もたくさん存在します。

今回は、子どもに関わる差別ということで、子どもの権利条約ではどのように差別の禁止が定められているのか、そして子どもの周りにはどのような差別が存在しているのか、ご紹介します。


また、近年注目を集めている「マイクロアグレッション」という言葉もご紹介しています、ぜひ最後までご覧ください!


子どもの権利条約からみる「差別」

差別の禁止は、子どもの権利条約第2条に定められています。

子どもの権利条約って何?という方は、ぜひ以下の記事もご覧ください!

子どもに向けては、このように紹介されています。

子どもは、国のちがいや、男か女かどのようなことばを使うかどんな宗教を信じているかどんな意見をもっているか心やからだに障がいがあるかないかお金持ちであるかないか親がどういう人であるか、などによって差別されません。(2)


政府訳はこちらです。

締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種皮膚の色言語宗教政治的意見その他の意見国民的種族的若しくは社会的出身財産心身障害出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。(3)

ちなみに、この差別の禁止は、子どもの権利条約の一般原則にもなっています。

これは、それぞれ条文に書かれた権利であると同時に、条約で定められているほかの権利を考えるときに、常に合わせて考えることが大切です。(4)

他の一般原則には、
生命、生存及び発達に対する権利
子どもの最善の利益
子どもの意見の尊重

があります!(4) 

子どもの権利に基づくプログラミング

「子どもの権利に基づくプログラミング(CRP)」とは、セーブ・ザ・チルドレンが事業を実施する際の基本方針で、特に子どもの権利に焦点を当てた「権利に基づくアプローチ」のことをさします。(5)


※セーブ・ザ・チルドレン…国連に公式に認証された、国連子どもの権利条約に定める子どもの権利~「生存」「成長」「保護」「参加」~の実現を目的として活動する国際NGOです。

図のように、「子どもの権利に基づくプログラミング(CRP)」では、
子どもを「権利保有者」と捉えます。子どもに関する問題が発生している場合、その原因を子どもの権利が保障されていないことにあると考えます。

したがって、その問題を解決するために、子どもの権利を保障する義務を負っている「義務履行者」に対して、責任を果たすように求めることになります。(5) 

スクリーンショット 2021-09-07 2.08.06

(5) をもとに作成

例えば、子どもが初等教育を受けられない状況が続く場合、その原因は、子どもの教育を受ける権利が保障されてないことにあると考えます。

そして、親・教師・学校・地域社会・政府・国際社会が初等教育に負っているそれぞれの責任を果たすように求めていきます。(5)

どんな差別があるだろう?

「子どもの権利に基づくプログラミング(CRP)」では、以下の3 つの領域における差別をなくすことを目的としています。

  1. 子ども個人に対する差別
  2. 障がいを持つ子どもなど、特定の子どもの集団に対する差別
  3. すべての子どもたちに対する差別
     (すなわち、子どもが大人よりもひどく扱われることを防ぐこと。例え    ば、社会が子どもに対して加えることを許容する暴力の限度など)。(1)

具体的な例としては…

  • 女子と男子は同等の権利を持つべきである。
  • 難民の子どもたちおよび先住民族もしくは少数民族の子どもたちは他のすべての子どもたちと同等の権利を享受するべきである。
  • 障がいを持つ子どもたちは、そうでない子どもたちと同等の水準の生活を送る可能性を与えられるべきである。
  • 遠隔の農村地帯に住む子どもたちは、大都会に住む子どもたちよりも与えられる機会が少ない、ということがあってはならない。
                                 など (1)


また、学校生活の中では以下のような例が示されています。

  • 特定の子をターゲットにして無視する、または仲間外れにする。遊びと称して、精神的・身体的苦痛を与える。
  • SNS等で本人の了解なく写真を送ったり、個人を特定できる形で誹謗、中傷したりする。
  • 私物や荷物を勝手に見たり、隠したりする。
  • 身体的特徴や過去の失敗など、本人が気にしていることを話題にしてからかう。
  • 公衆の面前で不快な発言や行動をして盛り上がる。
  • 「〇〇ってことも知らないの」などと相手をバカにした言動をする。
  • 「男のくせに仕草が女みたいで気持ち悪い」などと言ってからかう。
  • メールや電話をしつこくし続ける。
  • 「〇〇は〇〇が好きなんだ」などと噂を流す。
  • 相手が傷つくようなあだなをつける。
  • 個人的なこと(成績や性に関することなど)をしつこく聞く、又は言いふらす。
  • 試合でミスしたことについて、皆の前で罰を与える。(6)


国連からの勧告内容

国連子どもの権利委員会は、定期的に、子どもの権利条約の実施状況に関する審査を行っています。

日本についての審査は、日本が1994年に締約国となって以来、1998年、2004年、2010年、2019年に審査が行われています。(7) 


ここでは、2019年、4回目の審査の中から、差別に関する部分をご紹介します。

国連子どもの権利委員会から勧告された懸念点

包括的な反差別法が存在しないこと。
②非婚の両親から生まれた子どもの非嫡出性に関する戸籍法の差別的規定(とくに出生届に関するもの)が部分的に維持されていること。
③周縁化されたさまざまな集団の子どもに対する社会的差別が根強く残っていること。 (7)

※②…法律婚の男女の間に生まれた子どもか否かで、「嫡出」「非嫡出」と区別する出生届の問題など

そこで、以下の事柄をするように求めています。

包括的な反差別法を制定すること。
・非婚の両親から生まれた子どもの地位に関連する規定を含め、理由の如何を問わず子どもを差別しているすべての規定を廃止すること。
・とくに民族的マイノリティ(アイヌ民族を含む)、被差別部落出身者の子ども、日本人以外の出自の子ども(コリアンなど)、移住労働者の子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども、婚外子ならびに障害のある子どもに対して現実に行なわれている差別を減少させかつ防止するための措置(意識啓発プログラム、キャンペーンおよび人権教育を含む)を強化すること。(7) 


国連が直すべきところを教えてくれているのか!

そうだね!日本にはまだたくさんの取り組むべき課題があるんだね。


子ども×障がい×差別

障害児は子どものなかでももっとも被害を受けやすい立場に置かれた集団のひとつに属するといわれています。

特に、障害のある女子・農村部で暮らす障害児などは、諸要素の組合せにより被害を受けやすい立場だとされています。(8) 

ここでは、障害のある子どもの権利と差別について説明されている文書の内容をご紹介します。

暴力という形でその生存および発達を脅かす可能性がある
・サービス供給における差別は障害児を教育から排除することにつながる
良質な保健サービスおよび社会サービスに障害児がアクセスすることを不可能にする
・適切な教育および職業訓練を提供しないことは、将来の就労機会を否定することによる障害児差別である
・障害児に対する社会的スティグマ、恐怖心、過剰な保護、否定的態度、誤った考え方および支配的偏見は多くのコミュニティで依然として強力であり、障害児の周縁化と疎外につながっている (8) 

これらを解決するために、法の整備など、様々なことが求められています。

※スティグマ…一般と異なるとされる事から差別や偏見の対象として使われる属性、及びにそれに伴う負のイメージ


マイクロアグレッションとは?(補足)

最近注目されている差別のひとつに、「マイクロアグレッション」があります。これは、1970 年代に米国の精神科医ピアースによってつくられた造語です。平島(2021)は、次のように説明しています。

自分は「差別とは無関係」と考えている人々の無自覚の差別的攻撃性を指します。
例えば、生まれたときから日本で暮らす韓国人に対する「日本語,上手ですね」のひとことや、視覚障がい者に対して無意識に大声で話しかけてしまうことなどが代表的なものとして知られています。
マイクロアグレッションの厄介な点は、その攻撃性が微細で間接的であるため、被害者が「考えすぎだ」と思い悩みながら、日々の生活の中で反復され積み重ねられていくことと、いざ加害者にその辛さを表明しても「心外だ」「被害的だ」と否定され受け入れられずに、両者の溝がさらに深まるだけになりかねないことです。 (9) 


おわりに

最後に、子どもの権利に基づくプログラミング(CRP)にて重視されていることをご紹介します。

CRPは、社会から疎外されたられた子どもたち、そして、その子どもたちのインクルージョンを重視している。それには、プログラムや政策において、ジェンダーや障がい、民族性や HIV の状態、アイデンティティなどの側面、つまり、個別の課題に焦点をあてることが適当な場合もあるかもしれない。

しかし、ある子どものアイデンティティはそのたった一つの側面だけで定義されるものではなく、子どもたちが自らのアイデンティティの複数の要素を理由として複合的な差別に苦しむことがある、という事実を看過してはならない。

無差別性の原則は、私たちすべてにとっての課題である。私たちはみな、自らの育ち、社会性の産物であり、時として、ある特定のグループに対する不平等を容認してしまうということがある。よって、私たちは自分自身と闘わなければならない。私たち自身の組織の慣行、そして、過去からの盲目的な信仰や慣習に基づく自らの意見と闘わなければならない。(1) 

差別をなくしていくことが決して容易なものではなく、しかしきちんと向き合っていかなければならない問題だとわかります。

「差別」については今後もシリーズを続ける予定です!
「差別」と「区別」は何が違うのか、なぜ差別が起きてしまうのか、どうすれば差別をなくしていくことができるのか、などなど、
もっと掘り下げていきますので、次作をお楽しみに!


もっと知りたい方へ

ジェンダー差別、障害を持つ子どもに対する差別、民族と人種による差別、カースト(社会階級)による差別、HIV/エイズによる差別が紹介されています!
差別・偏見 ユニセフ
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act04_10.html

女の子の教育に着目した解説を読むことができます!
ジェンダーの平等 ユニセフ
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act02_01.html

素敵な取り組みが紹介されています!
子どもと考えるSDGs|ジェンダーと多様性を知ろう
https://style.ehonnavi.net/sdgs/2020/12/29_005.html

マイクロアグレッションについて、具体的な事例をもとにわかりやすくまとめられています!
https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0018/topic008.html

編集後記

はじめまして!イラスト編集を担当しました、たんぽぽです。
普段は大学生としてキャンパスライフを送っています。

今回作成するにあたって
「差別は良くないこと、いけないこと」とはわかっていても、具体的に説明して、と言われたらどう答えたら良いのだろう…これはどう?あれはどう?
と私自身一度考えるきっかけとなりました。
まだまだ知らないことが多く、常に学びの連続です💦

差別に限らず、RettBorneの記事で扱っている子どもの人権についての問題は、生きていく上でとても大切なテーマだと感じています。
記事を読んでいただくことで、皆さんが考えるきっかけとなればと思っています。

次回以降もよろしくお願いします!

ーーーー

こんにちは、今回note編集を担当した代表のこまこです。普段は大学4年生をしています。最近引きこもり生活のプロになってきたように思います。笑

差別というテーマは、私の日常生活の中では大人も含むもっと広い範囲での議論になることが多いので(議論とはいってもTwitterぐらいですが)、
いつも以上に「子ども」を意識して資料をあたりました!

なんとなく「差別はいけないことだ」と思いながら生きてきて、どちらかと言えばこのようなテーマについてたくさん考えている方かな?と思っていましたが、
きちんと考えないといけないことや、向き合わないといけないことがたくさんあるんだな、という気付きがありました…

次回以降もがんばります💪

参考文献・引用文献

[1]チャイルド・ライツ・プログラミングー権利に基づくアプローチをプログラミングにどういかすかー Save the Chilfren (最終閲覧日:2021年9月7日)
[2]子どもの権利条約 日本ユニセフ協会抄訳 1〜8条 ユニセフ(最終閲覧日:2021年9月7日)
[3]子どもの権利条約  政府訳 ユニセフ (最終閲覧日:2021年9月7日)
[4] 子どもの権利条約について ユニセフ (最終閲覧日:2021年9月7日)
[5]使命/設立背景 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン (最終閲覧日:2021年9月7日)
[6]いじめや差別、ハラスメントのない学校生活を送るために 成蹊学園ハラスメント防止委員会 (最終閲覧日:2021年9月7日)
[7]子どもの権利委員会:総括所見:日本(第4~5回)ARC平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト (最終閲覧日:2021年9月7日)
[8]子どもの権利委員会 一般的意見9号(2006年)障害のある子どもの権利 子どもの権利委員会 (最終閲覧日:2021年9月7日)
[9]平島 奈津子 (2021). 多様性と差別 女性心身医学, 25, 157-158.

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