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はじめに

さて、みなさんの中に、次のような話に心当たりがある、あるいは聞いたことがある、という方はいませんか?

  • 「文字が読めないので、人に読んでもらうのを聞いて理解している」
  • 「漢字がなかなか覚えられない」
  • 「いくら練習しても、計算の繰り上がりを上手にできない」

これらはLD(学習障害)のある人にみられる特徴の例です。


日本では、限局性学習症、学習障害などと呼ばれています。英語で表すとLearning Disabilitiesです。D、の部分については、Disorders、Disabilitiesという意味で使われていましたが、最近では、Differences(学び方の違い)、Diversities(学び方の多様性)とも言われています。

これらに当てはまる人は、単に読み書きや計算が嫌い、というわけではありません。

医学上の分類では、限局性学習症(LD)は、自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなどと並ぶ、発達障害の一つとされています。

限局性学習症(LD)か否かを診断できるのは医師に限られるんだ。みなさん自身や身近な人が、これからお話ししていくLDの特徴に当てはまるかもしれない、と思った場合は、一度、学校の先生や自治体の教育相談室(センター)、医療機関などで相談してみることがおすすめ!

限局性学習症(LD)、またはその傾向があると判断することで、それぞれに最適な学習方法が見つけやすくなるかもしれないよ!

限局性学習症(学習障害)とは?

文部科学省が定めている、教育上の定義を見てみましょう。

「学習障害(LD:Learning Disabilities)とは,基本的には,全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち, 特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は,(中略)視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接的な原因となるものではない。」[1]

※参考
文部科学省が定める知的障害の定義はこちら
文部科学省が定める情緒障害の定義はこちら

つまり、

  • 本人の意欲は十分ある。
  • 読み書きや計算といった、学習に関わる特定の事柄が上手くできない。
  • 学校や日常生活の中で困難が生じてしまう。

という状態がLDとされている、と解釈できます。

視覚障害や知的障害といった他の障害では説明ができないことも特徴の一つだね!

病院で診断を受ける際は『DSM-V(精神障害の診断・統計マニュアル)』が使われるのですが、こちらの定義は少し異なります。

簡単に説明すると、上記であげられている能力のうち、
「読む、書く、計算する、推論する(数学的推論)」のいずれか1つ、または複数において
一定期間(6ヶ月)以上、困難に直面している状態を「限局性学習症」と定め、さらに軽度、中度、重度に分けています。[2]
マニュアル改訂前は以下の3つに区別されていましたが、並存もよく見られると言われています。[3]

  • 読字障害(ディスレクシア):読み書きの困難
  • 書字障害(ディスグラフィア):書くことの困難
  • 算数障害(ディスカリキュア):計算・推論の困難

限局性学習症はあくまでこういった障害の総称であり、それぞれの特性は人によって大きく異なるのです。
こちらについては次回以降、掘り下げていきます!


LDは、知的障害や自閉スペクトラム症(ASD)・ADHDなどと合併することもあります。
学習の場面で明確になりやすいため、小学校入学後に明らかになることが多いです。

しかし、「がんばればできる」「努力が足りない」「勉強不足」と見過ごされることが多いといわれています。

支援の必要性が認知されにくく、結果的に子どもの自信の低下につながりやすいから、注意が必要なんだね。[4]

平成24年文部科学省の調査からわかったこと

平成24年の文部科学省の調査[5]によると、学習障害の疑いがある生徒は、一般の通常学級の中に4.5%いると言われています。およそ20〜25人に1人いる計算になります。


読字障害、書字障害、算数障害の中では読字障害の割合が最も多く、疑いがある生徒は通常学級の中に2.3%いると報告されています。

また、この調査では、発達障害の疑いがある生徒の支援状況についても明らかになりました。
たとえば「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒(推定値6.5%)」のうち、「いずれの支援もなされていない」生徒が4割近くにも昇ります。
もちろん実際に支援が必要なのかどうかこの調査では分かりませんが、多くの児童が必要な支援を受けられていない可能性もあります。

※ただし、この調査は、質問項目への教員の回答をポイント換算して、基準点以上の生徒をカウントしたものであり、医師による確認を行っていないため、注意が必要です。
たとえばこの調査では、基準点には満たなかったものの学習障害の傾向がある、グレーゾーンの生徒を拾い切れていません。ですが、なかなか当事者の実態を掴めていなかった中で、この調査を行ったことには大きな意味があります。また、調査から10年以上経過しているため、現状を反映できているとはいえません。

もっと詳しく知りたい人へ


こちら[6]の記事は、幼児期から成人期までの年齢別の特徴の現れ方や、LDの特徴に心当たりがある時の対処法などが、専門家によって分かりやすくまとめられています。専門機関の紹介や、書籍の紹介もあり、参考になる情報がたくさんあります。ぜひ読んでみてください!

おわりに

誰でも学習を始めたばかりの頃に直面するような困難が続くため、LDのことを知らなければ、個人の特性であると認識するのも難しいかもしれません。

それによって苦しむ人や対処が遅れる人が増えないよう、LDのことがもっと広まってほしいと思っています。
今回は学習障害の定義と実態についてお話ししました。学習障害による悩みは人によって様々です。次回は当事者が実際にどのような困難に直面しているのかや、相談先・支援先などについてお話ししていきたいと思います。

引用文献

[1] 学習障害 文部科学省(最終閲覧日:2021/8/24)
[2] DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院
[3] 稲垣 真澄・米田 れい子 (2017). 特集 限局性学習症(学習障害)ー総論 医療の立場からー児童青年精神医学とその近接領域 58, 2, 205-216.
[4] 学習障害(LD)とは LITALICOジュニア(最終閲覧日:2021/8/24)
[5] 通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について 文部科学省(最終閲覧日:2021/8/24)
[6] 学習障害(LD)とは?学習障害の症状3種類、年齢別の特徴、診断方法について詳しく説明します LITALICO発達ナビ(最終閲覧日:2021/8/24)

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