校則って何?定義と役割、ブラック校則の実態【校則①】

はじめに

 皆さんが通っている、あるいはかつて通っていた学校には、きっと「校則」と呼ばれるルールがあったと思います。

特にその存在を意識せずに、学生生活を終えた方もいれば、今まさに、その「校則」に苦しめられている縛られ、苦しい思いをしている方もいるかもしれません。

この記事では法律や子どもの権利、そして心身の健康の観点から、現代の「校則」の実態に迫ります。

校則がどうあるべきか読んでいる皆さんと一緒に考えていこう!

「校則」とは

 ここまで当たり前のように「校則」という言葉を使ってきましたが、「校則」とは何なのでしょうか。

文部科学省の『生活指導提要』で定められた「校則」の定義と性質を、わかりやすい言葉で示します。(1)

「校則」

= 学校が教育上の目標を実現するために、

児童・生徒が守るべき学習・生活のためのルール

[1]生徒指導提要(文部科学省)

◯校則について定める法律があるわけではない

◯ただし、かつての裁判では、

 ・学校が教育目的を果たすために必要で、妥当な範囲で校則が定められる

 ・児童生徒の行動を一定の範囲内で制限することができる

 ・校則を決める権利は、学校運営の責任者である校長にある

 とされた

◯校則の代表例

 ・通学、欠席や早退等の手続き、欠席等の扱い、試験について 例)登下校の時間

 ・校内外の生活について 例)授業時間、交通安全、アルバイト

 ・服装、髪型、所持品について 例)制服・体操服、染色・パーマ、お金

◯指導をするときは、個々の児童生徒の事情を十分にふまえるようにする

◯校則違反への罰則も、単なる罰にとどめるのではなく、児童生徒が反省し、自主的に規則を守るような教育効果を持たせる

◯事前に児童生徒・保護者に知らせる必要がある

◯児童生徒や保護者の考え方、地域や社会の状況、時代の進展に合わせて

 見直される必要がある

[1]生徒指導提要(文部科学省)

 これらの定義や性質をふまえたうえで、皆さんの学校の「校則」や先生の指導を、改めて振り返ってみましょう。

  • 大勢の前で叱られたり、大量の反省文を書かされたり… これって本当に「効果のある指導」なのかな…?
  • 自分の学校の校則なんて、入学する前は全く知らなかった…!
  • 校則って、生徒や保護者の意見によって見直される必要があるんだ… なんだか一方的に押し付けられていた気がするなぁ

こんなふうに感じた方もいるかもしれません。

これらの視点は、次章で説明する「ブラック校則」について考えるときに、非常に重要になります。

(参考:文部科学省 「生徒指導提要」  (1)

「ブラック校則」の実態

 最近になって、「一般社会の常識から離れた、理不尽な校則」であるブラック校則が問題視されるようになってきました。

 そのきっかけの一つとして、2017年、大阪の府立高校の生徒が、教師に髪の毛を黒く染めるよう強要され、不登校に追い込まれたと訴えた事件があります。(2) 

この生徒は、地毛が茶色っぽいことを事前に申請していたにも関わらず、教師に黒染めを強要されたと訴えていました。加えて、不登校になった後も、名簿に名前を載せない、教室に生徒の机を置かないなど、不適切な指導があったとされています。


 ほかにどんなブラック校則があるんだろう?

これまで報告があったブラック校則の一部と、それが子どもやその保護者にとって理不尽だとされる理由をまとめてみたよ!(3)

毛髪指導

 ・髪染め強要

  例) 生まれつきの色に関わらず、黒染めを強要 

 ・パーマ禁止

  例) 生まれつきの「くせ毛」であっても、毎朝まっすぐに伸ばすように要求

 ・特定の髪型の禁止、あるいは強制

  例)眉・襟・耳に、髪がかかってはいけない 三つ編みは禁止 丸刈り要求

特定の身体的特徴を持つ人への差別、経済的負担の増加、子どもの自由の侵害

服装規定

 ・サイズの指定

  例)スカートは膝下 ズボンの裾から足首が見えてはいけない

 ・色や柄の指定

  例)下着は白 靴下は無地の白 

 ・アイテムの制限

  例)冬場のマフラー・タイツの着用禁止 夏場でも衣替えまではブレザー着用

経済的負担の増加、ハラスメントのリスク、健康被害の可能性 

行動制限

 ・健康を害する行動制限

  例)体育の授業中に水を飲んでは行けない 日焼け止めを塗ってはいけない

 ・休み時間の行動制限

  例)授業の合間に私語をしてはいけない 給食を残すと休み時間に遊びに行けない

ハラスメントのリスク、健康被害の可能性、子どもの自由の侵害

 様々なブラック校則が理不尽とされる理由については、次回以降の記事でさらに細かく取り上げていきます。

具体的に問題点を考えよう!:「黒染めの強要・パーマの禁止」

日本では「染髪禁止・パーマ禁止」を校則に掲げている学校が多いよね。

その理由で、「黒髪・ストレート」以外の学生は校則違反とみなされやすい空気があるよね。地毛が「黒髪・ストレート」以外の学生は地毛証明書を提出する学校もあるって聞いたよ。

知ってた?実は日本の学校に通う中高生のうち、「黒髪ストレート」は、約6割なんだ。 (3)

つまり、4割の中高生が、地毛なのに校則に違反していると思われたり、地毛証明書を出したりする必要がある可能性があるってことか!

そういうことになるね。さっき紹介した記事みたいに、地毛なのに黒染めを強要された例もあるんだ。

生まれつきの身体的特徴のまま、日々の生活を送りたいと望む生徒に対して、なんでそんなことを言うんだろう。

「黒髪ストレート=子どもらしさ」という、科学的根拠がない定式が信じられていて、それ以外の生徒が存在することで「風紀が乱れる」と考えられている、という説があるんだ。

生徒自身は「集団生活の風紀を乱そう」なんて思ってないと思うけどなあ。

そうだね。だから、本当に適切な教育といえるのか疑問の声が上がっているよ。

自分は「黒髪ストレート」じゃないから関係ないっておもってたけど、「あなたのその黒髪は校則違反だから、明日には茶色く染めてきなさい」って言われたり、学校の先生から「あなたは黒髪だから校則違反をしているのではないか」という前提で、地毛証明書の提出を求められるのってストレスに感じそうだな、、

本来、自分の身体的特徴をどのように捉えるかは、個人の自由であるはず!しかし、「あなたの特徴はルールに反している」と何の根拠もなく決められることで、本来必要のない罪悪感を感じたり、自己肯定感が低下したりすることも考えられるよね。

現在の校則に基づく毛髪指導は、特定の人だけにこのような理不尽を押し付けながら成り立っているといえるかもしれないね。

「黒髪ストレート」を基準とした校則が抱えるリスク

大きく次の3つにまとめられます。

特定の身体的特徴を校則違反とみなすことで、学校内での差別を助長する

 ある身体的特徴が「ルール違反だ」とされることで、その特徴を持つ人に対してマイナスなイメージが生まれます。結果として差別へとつながることも考えられます。

実際に、髪の色や髪型に対する校則・指導によって、他の生徒や教師から差別されているように感じた、と報告した事例もあります。(3)

家庭の経済的負担の増加

 黒染めのための薬剤を購入したり、美容院に通ったりする必要があります。結果として家計からの出費が増えるでしょう。

髪を染めたり、縮毛矯正をしたりすることは、髪に対してダメージを与えることにもなります。

本来必要のない損害が生じていると考えられます。

子どもの自由の侵害

 本来、子どもには、自分の身体的特徴を自由に表現する権利があります(子どもの権利条約 第13条)。

生まれつきの髪を染めることも、そうでないことも、どちらも選択できる権利があるはずですが、これらの自由が侵害されるケースがみられます。

 これらのリスクを踏まえたうえで、毛髪指導が必要であると考えるならば、

生まれつき「黒髪ストレート」以外の生徒がいることが、学校での集団生活にどのような影響を及ぼすのかについて、学校側が明確な根拠をもって説明する必要があります。

規則に基づく理不尽な指導方法

 さらに、ブラック校則は、その内容の理不尽さや、存在理由のあいまいさに加えて、規則に基づく理不尽な指導方法にも注目が集まっています。以下は、その一部です。(3)

 ・校則に対して異議を唱えても、

  「規則は規則だから」「嫌なら学校を辞めろ」

  「こんなルールも守れないようじゃ社会ではやっていけない」

  などと取り合ってもらえない

 ・校則に違反すると、

  大勢の前で叱られる、体罰をされる、登校させない

  などのいきすぎた指導がある

 ・校則違反をチェックするという名目で、

  教師に下着の色について言及される、身体をじっと見たり触られたりする、

  「スカートが短いから痴漢に遭う」と間違った認識に基づいて叱責される

  などのセクハラに該当する指導がある

これらの指導には、生徒が自主的に規則を守るような教育効果があるとは、あまり考えにくいです。

もし本当に、生徒が自発的にこれらの規則を守ることを望むのであれば、

教師は「この規則を守ることで、学校での教育活動にどのような利点があるのか」について、

説得力のある理由に基づいて説明する方が良いのではないでしょうか

私は、「外の社会は学校よりもっと理不尽だから、校則も守れないようじゃ、大人になってから大変だ」っていわれたことがあるよ。

本当にそうかな?もちろん、みんなが安全に過ごすために、守るべきルールはあるよね。でも、社会に出て働き始めてから、髪型とか服装、下着の色まで指定されて、仕事をするのに問題のない行動まで制限されることがあるのかな?

このような、「理不尽な拘束を守れない = 社会に出ると苦労する」という主張は、現在も様々な場面で見られます。

しかし、他人の下着の色について言及し、本人の許可なく体に触り、性犯罪の被害者に非があるような言動をとることの方が、不適切だと考えられないでしょうか?

もし、学校の中よりも、外の方が理不尽であったとしても、理不尽に耐えることだけが正しいとは言い難いです。理不尽なことに対しては、正当な手段で対抗し、より良い社会を作ることができる人材を育成するのが、教育のあるべき姿ではないのでしょうか?

 今回は、ブラック校則が、学校という閉鎖的な空間で、児童生徒の行動を過剰に制限し、心身の健康を損なう可能性があることをご紹介しました。

次回以降は、理不尽なブラック校則に関連して生じるリスク、法律や「子どもの権利条約」の観点から見たブラック校則の問題点について、さらに詳しく取り上げていきたいと考えています。

(参考:日本経済新聞 「『髪黒染め』校則は適法、府に一部賠償命令 大阪地裁」 (2)

荻上チキ・内田良 (編) ブラック校則 —理不尽な苦しみの現実— (3)

みんなの体験談

・髪型やスカートの丈はもちろん、下着の色や靴下の色・丈、髪を後ろで括る時の高さにまで制限がありました。

・セーターやカーディガンのみで教室から出ることが禁止されていました。校舎内であっても、教室の外ではブレザーを着て、前のボタンを全て閉める必要がありました。

・一人でも体育の集合時間に遅れたら、生徒全員で教室に戻り、もう一度制服に着替え直して、再度集合する必要がありました。

RettBorneのインスタのストーリーの投稿に返信をくださった方や、RettBorneスタッフの皆さんから、体験談を集めました!

ご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました!!

編集後記

 お久しぶりです。ぱんだです。先日無事に大学の卒業論文を提出し、つかの間の休息を楽しんでいます。

 今回は、ブラック校則について、その具体的な報告事例をご紹介しました。筆者は、幸いにも、厳しい校則のある学校に在籍したことはありませんから、今まで校則について深く考えることはしてきませんでした。今回記事を書くにあたって、本を読んだり、友人から話を聞いたりしたことで、ブラック校則の問題性を痛感しています。ブラック校則に苦しむ子どもたちが声を上げられるように、学校の外部にいる大人たちが、積極的にアプローチする必要性を感じています。

 ここまで読んでくださって、ありがとうございます。ご自身の体験談などありましたら、ぜひコメントいただければと思います。

もっと知りたい方へ

手軽に知りたい方へ

文部科学省のホームページから、「生徒指導提要」の全文を読むことができます

生徒指導提要(文部科学省)

「ブラック校則をなくそう!」プロジェクトのホームページから、様々な関連記事を読むことができます

「ブラック校則をなくそう!」プロジェクト

より専門的に知りたい方へ

『校則を考える—歴史・現状・国際比較—(晃洋書房)』(大津尚志)

『ブラック生徒指導〜理不尽から当たり前の指導へ(海象社)』(川原茂雄)

参考文献

[1] 生徒指導提要  文部科学省 (最終閲覧日:2022/2/14)

[2]「髪黒染め」校則は適法、府に一部賠償命令 大阪地裁 日本経済新聞 

[3] 荻上チキ・内田良 (編) ブラック校則 —理不尽な苦しみの現実—東洋館出版社

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