子どもに関する法律を調べてみた①【現在の法律一覧と実態】

はじめに

今、日本では、「子ども基本法」という新しい法律が作られています。

なぜ「子ども基本法」を作る必要があるのでしょうか。

日本財団は、

子どもに関わるあらゆる場面で、子どもの権利が守られるべきと定める法律がないから

と説明しています。[1]

法律がないから法律を作る、ということになりますね。

しかし、日本に子ども関係の法律が全くないわけではありません。

「あるけどない」という状態です。

では、今の法律では何が定められているのでしょうか。

今回は、子どもに関する法律と、その実態を紹介するね!

さらに、記事の最後に参考文献を載せているので、探求活動や調べ学習にぜひ役立ててくださいね!

全体を図にまとめてみた

日本財団が紹介している概念図を参考に、子どもに関わる法律の全体マップを作ってみました![2]

たくさんの法律がありますね。

どれぐらい知っているかな?

ここからは、それぞれの法律の特徴を、簡単に紹介していきます。

いろんな法律を少しずつ紹介

児童虐待の防止等に関する法律

通称「児童虐待防止法」と言われており、2000年に制定されました。

ここでは、児童虐待の定義を簡単にご紹介します。

  • 身体的虐待…殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
  • 心理的虐待…言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(DV)、きょうだいに虐待行為を行う など
  • 性的虐待…子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
  • ネグレクト…家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など [3] 

虐待にもいろんな種類があるんだね

2020年の改正では、体罰の禁止に関する規定が明記されました。

体罰については、レットボーネでシリーズを掲載中です。児童虐待防止法については第1回で取り上げているので、こちらもぜひご覧ください!

民法

民法とは、主に家族関係や財産に関する法律です。

2011年に、子どもに関する条項の改正がおこなわれています。この改正のポイントは、条文の中に 「親権者による子の利益の遵守」 という概念が明確に加えられたことです。[4]

具体的には、このような項目ができました。[4]

  • 親が子どもをしつけるにしても「子の利益」が期待されることが必要(第 820 条)
    • before:親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う
    • after:親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う
  • 親権喪失となる理由として 「子の利益が著しく害されている」 場合(第 834 条)
    • before:父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができる
    • after:父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

親権者による理不尽で身勝手なお仕置きなどを「しつけや親の責任の範疇」と言い逃れすることができなくなったんだ

親権の濫用を阻止しているんだね

いじめ防止対策推進法

いじめ防止対策推進法は、2013年に成立・施行された、比較的新しい法律です。

この法律が成立したきっかけのひとつに、2011年に起きた中学生のいじめ自殺事件(大津市)があります。[5] 

学校や教育委員会の調査、そして調査の結果の公表などについて、世間から厳しい批判があがったんだ

第1条では、教育を受ける権利という言葉が登場します。

第1条 この法律は、いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、…[6]

いじめは「教育を受ける権利を著しく侵害」すると説明されるんだね

他にも、いじめ防止対策推進法では、学校にいじめがあった際の調査が義務付けられていたり、全国の学校にいじめ対策の組織を作ることが求められています。

児童福祉法

その名の通り、児童の福祉に関する法律です。

戦後間もない1947年に制定され、当時は、「戦争で親を亡くした子どもたちが、最低限度の生活を送れるようにすること」を、主な目的としていました。日本国憲法の理念である「法の下の平等(14条)」「健康で文化的な最低限度の生活(25条)」がもとになっています。

現在では、子どもがより良い生活を送るための法律に位置付けられています。

フクシって言われてもよくわかんないんだけど…

具体的にはこんなことが定められています。

  • 子どもの親や国、地方自治体に、子どもの健やかな成長に対する責任がある
  • 障害のある子どものための施設や制度を作る必要がある
  • 児童虐待を発見したときには児童相談所通告しなければならない [7]

関連相談機関には、児童相談所(第12条)、母子生活支援施設(第38条)などがあります。

保育園で働くのに必要な保育士資格も、児童福祉法で定められているんだ

児童福祉法と子どもの権利

2016年に行われた改正では、第1条に子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)のことが明記されました。

日本の法律で子どもの権利条約のことが明記されたのは、2016年の児童福祉法改正が初めてなんだって!

日本が子どもの権利条約に批准(同意)したのは1994年だったね

では、改正前と改正後を比べてみましょう。

改正前

第1条 すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。…すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。[8]

改正後

第1条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。[2]

ほんとだ!条約の名前がそのまま入っているんだね!

改正後

第2条 …社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。[8]

子どもの権利条約の4つの原則のうち、意見する権利、子どもの最善の利益が触れられているよ

※意見する権利と子どもの最善の利益については、レットボーネでも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください!

子どもの貧困対策推進法

2013年6月に成立し、2014年1月に施行されました。

この法律の目的は、

  • 子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されないこと
  • そのために,貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備すること
  • そして教育の機会均等を図ること [9]

です。

この法律も、教育のことが重視されているんだね

子どもの貧困対策推進法でも、子どもの権利条約について触れられています!

第1条 この法律は、子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、全ての子どもが心身ともに健やかに育成され、及びその教育の機会均等が保障され、子ども一人一人が夢や希望を持つことができるようにするため、子どもの貧困の解消に向けて、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子どもの貧困対策に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び子どもの貧困対策の基本となる事項を定めることにより、子どもの貧困対策を総合的に推進することを目的とする。[10]

これは2019年の改正で追加されたんだ。

実際の取り組みとして、内閣府によって特設ページが設けられています。[11]

まとめと次回予告

ここまで、既存の法律をいくつかご紹介しました。

さて、これらの法律には共通点があります。

それぞれの省庁(厚生労働省、文部科学省など)で、それぞれの目的に合わせて作られた

ということです。

これがどのような意味を持つのでしょうか。

詳しくは次回、子ども基本法と合わせてご紹介します!

もっと知りたい方へ

LITALICO発達ナビ 子どものための法律、児童福祉法って?目的や支援、法改正についてをわかりやすくご紹介します。 

子ども基本法WEBサイト

子ども庁の創設に向けて

編集後記

最近の悩みは、書き初めは調子がいいけど、だんだんエネルギーが切れてきて、なんだか尻すぼみな感じで書き終わってしまうことです、、。読みがいのある記事を書けるようにがんばります!

私は法律に精通している人ではないので、自分自身学ぶことが多い回だったなと感じています。普段はあまり気にすることなく過ごしているけれど、実はたくさんの法律や、制度や、仕組みの中で生きているということが改めてよくわかりました。

今回は、子どもに関する法律を全体的に取り上げる形でしたが、それぞれの法律の具体的な中身や、子ども基本法に関する最新情報など、色々と深掘りながら記事を作っていきたいと思っています!

こまこ
こまこ

発達心理学を専門にしている大学院生。
Rettborneの代表です。

参考文献

[1] 子ども基本法HP

[2] 子ども基本法HP

[3] 児童虐待の定義と現状 厚生労働省

[4] 内ヶ崎 西作・陳 基明 ・荷見 千草・野村 浩明 (2017). 子どもを守るために行われた民法と児童福祉法の改正について 日大医誌, 76, 45–46.

[5] いじめ防止法が施行 学校に対策組織を義務付け 日本経済新聞

[6] いじめ防止対策推進法 e-Gov法令検索

[7] 児童福祉法 e-Gov法令検索

[8] 児童福祉法等の理念の明確化等 厚生労働省

[9] 子どもの貧困対策の推進に係る取組 文部科学省

[10] 子どもの貧困対策に関する法律 e-Gov法令検索

[11] 子供の未来応援国民運動 内閣府子供の貧困対策推進室

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